事例紹介 Case studies
房総野生生物研究所代表 手塚 幸夫 様

3Dは、3次元(Three Dimensions)ではなく、デジタル細密スケッチ(Digital Detail Design)だった

ゲンジボタル、ミヤコタナゴ、シュレーゲルアオガエル、トウキョウサンショウウオなど、水辺の小動物の生息環境を調査・研究を始めて30年になる。

調査を進める過程で重要視するようになったことがある、里山(農林地)の伝統的な自然管理の手法、とりわけ水田を中心とした水辺の構造と環境を調べていくことだ。

当然のことながら、調査をすればその分だけ生物たちの分布や生態に関するデータは集積していく。問題は、生息環境である。水田や水路の生息環境は数値化したりモデル化したりするのが難しい。研究する人によって異なるが、私の場合はスケッチ(図示化)して表すことを基本にしてきた。写真を使うのもいいが、自分の目で見たものをスケッチすることに意味があると考えているからである。

そんな中で出会ったのが4D-LABの大八木正広さん、そして3Dレーザースキャンである。

実は、3Dといってもドローンでの撮影画像と似た立体像になるだろうと思っていた。ところが、実際に見てみると写真などの画像とは異なっているではないか。スケッチなのだ、それも手書きとは違い細密画になっている。ならば、これまでに私が描いてきた水路・水辺(スケッチ)と3Dレーザースキャンとを重ね合わせてみると、何か新しい画像が生まれてくるかもしれない。そんな考えを大八木さんに話してみる。返事は「一緒にやりましょう」。「生物の生息環境や自然景観に興味を持っていた、機会があればスキャンしてみたいと思っていた」とのこと。さらに、私がスケッチを描いてきたポイントに興味があるという。

2022年夏に、大八木さん、グリーンレーザ (ALB)のデータを活用している息子の3人で待ち合わせ。私の研究テーマの1つである「コンクリートで護岸されていても貴重種が生息している水路」を4か所スキャンすることになった。

とにかく暑い1日であった。炎天下濡れタオルを首に巻いてカメラを回し続ける、そんな大八木さんの姿が目にしっかりと焼き付いている。

残念ながらまだこの日の測定した結果をまとめ、公開・発表する段階には至っていない。スキャンした生データを画像にしていくこと(大八木さん)はすぐにできると思うが、画像を分析し、修正し、生物にとっての環境を可視化するのに(私の作業に)に時間がかかるからだ。

ただ、大八木さんの3Dスキャンに同行して、理解したこと、可能性を感じたことが幾つもあった。ここでは、それらを箇条書ではあるが書き出してみたい。

* 3Dレーザースキャンにもとづく画像は、「単なる写真」ではなく「写真に点描の細密スケッチを重ね合わせた画像」である。

* レーザースキャンは、写真よりもリアリティがある、それは無数のドット(スキャンデータ)が「独特の立体感」を生み出しているからのように思われる。

* 人の手で描かれるスケッチは、生物の目に映る「独特の立体感」を映し出している。人が描くスケッチでつけられる独特の陰影が真の陰影とは異なっているからであろう。ただし、この立体感は3Dスキャンの立体感とは異なっている。

* 3Dスキャンは水面下、特に水深の深い水辺の底面の測定が苦手である。実測あるいはグリーンレーザでの測定を加えて水中をのぞき見できるような画像を作ることができたら画期的なものになるであろう。

最後に一言

今回の測定で得られた3Dスキャンデータからどのような画像が描かれるのだろうか。それが、仮想空間に近づくのかそれとも現実空間に近づくのか、さらに、人が書くスケッチと比べてどんな風に違った世界を描くのか、とても楽しみである。

2009年に描かれたスケッチ。3Dスキャンはその13年後に行われた。

以下の3Dスキャンデータと比較し現況変化をご覧ください。

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